「先見の明がある人」になりたいと思う。
先見の明があると、ビジネスチャンスはもちろんのこと、人生が生きやすくなりそうだ、と感じるからだろうか。
あと、単純に「デキる人」的な、響き的にも格好いいという、少し不純かもしれない動機もある。
では、先見の明があるってどういうことか??
私のイメージとしては、少し先の未来が見えている、ということかなと考えた。
だから未来のことを知りたい、どういうものがこれから主流になるのか知りたい、そう思って読んだのがこの本だ。
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読んでみてまず思ったのは、未来を知りたいと思ったとき、ある程度概念的なものになるのかな、ということだった。
考えてみれば、ある程度具体的にイメージできて、サービス化できていたら、既に存在しているはずだ。
そして具体的にイメージするって難しいのだ。
そういう意味で、ドラえもんは凄い。
こんな道具が出来ていて、こんなことが出来て、とあんなに具体的(実現可能、不可能は別にして)に描いているのだから。
この本ではリアルにこの先を予測した世界が描かれている。
2016年に出版されている本なので、既にその時から4年後の未来になっているが、既に日常にある程度取り入れられていて、イメージがつく具体的なものもあれば(読む、と言う行為から、スクロールする、画面を見るという行為が増えること、シェアするといった概念、選別するサービスの必要性など)、なんとなくぼんやり理解できるかも…でもまだこれからなのかな、というものもある。
海外の翻訳本であることと、あとは物理的に、本の文字の大きさや書体の関係か、個人的には正直少し読みにくく感じたが(結構時間がかかった…)これから世界がどう変わっていくのか、こういった流れになっていく、ということが、色々な根拠を元に描かれている。
考えてみたら、インターネットがこれだけ普及する前の時代に、今あるサービスを具体的にイメージするのは多くの人にとって難しかった。
とはいえ、でもこれから何が流行るのか、どうなっていくのか、が少しでもわかっていたら、先見の明があれば、何か出来たはず…と思う人は多いだろう。
そんな人たちにこの本は
『今こそが、未来の人々が振り返って、「あの頃に生きて戻れれば!」と言う時なのだ」
と説いている。
未来がどうなるのか、新しい技術や流れに想いを寄せておくことで、先見の明は(鍛えるといったら変だけれど)育てることができるのかも知れない。
生まれ持っての先見の明がある人は良いが、努力で先見の明が欲しい!と思うのであれば、みんながまだ興味がないことにもいち早く興味を持ち、その可能性を知っておく必要がある。
この本は、そんな私に、こういう風な概念が詰め込まれたサービスは今後流行るかもよ、と教えてくれる。
先見の明を鍛えるのに必要な訓練をする上で、こういうところに目をつけておこうね、というヒントをくれる、そんな本だ。
この本を読むのにおすすめの人
- 未来の世界がどうなるか興味がある人
- 新しいテクノロジーに興味がある人
- 先見の明がある、と言われたい人
- 少し難しめの本でも読めるという人
個人的備忘録:12の特徴
1. なっていく
簡単に言うと「アップグレードの連続」
結果(名刺)ではなくプロセス(動詞)に変わっていく。
完成品として販売されるものではなく、常にアップデートされ続ける、そんな商品やサービスが増えていく。
2. 認知化していく
全てのものにAIが加えられていく、そしてきっとAIで完結してしまうことも増えるはず。
今ロボットが取って代わろうとしているものは私がやりたいことか?と改めて問いかける必要はあるだろう。
世界中が利用して人工知能(AI)を強化することで電気のような、当たり前のサービスになっていく。
3. 流れていく
全てのことはリアルタイム化していく。
何かが無料でどこにでもあるようになると、その経済等式における位置が逆転する。
例えば電気が希少な時→ろうそくは貧乏人が使うもの、しかし電気が普通に溢れた今では、ろうそくを灯すのが豪華だったり、雰囲気作りで素敵…という概念に。
同じく、今はコピーすることは造作もなく、無料で手に入る
→コピーできないものに価値ある(信用など)時代に。
★人々は無料でも手に入るものに何故お金を払うのか
★本当は無料のものにお金を払っているときに何を買っているのか 以下が無料より良いと思われているもの8つ
①即時性(すぐに入る)
②パーソナライズ化されている
③解釈(フリーソフトの使い方やDNAの解析)
④信頼性(無料でも精度などに信頼がないとお金を払ってでも、信頼があるものを買う)
⑤(所有よりも)アクセス可能性(クラウドサービスなどで、いつでもどこでもアクセスできるサービスにお金を払う)
⑥実体化(生のライブ)
⑦支援 (しかし以下の条件が必要:①支払いが簡単 ②額が妥当 ③メリットが明確・確実に届いていること
⑧発見可能性(レコメンド・テレビガイドなどにお金を払う心理)
流れていく過程:固定的(希少)→無料(コピーされどこにでもある)→流動的(共有)→オープン(アップグレードの連続)
4. 画面で見ていく
本は熟慮する心を養成する、スクリーンはより実用的な思考法向き(新しい単語を調べたり、意見をきいたり、ツイートする)
スクリーンで読む場合はリアルタイムの思考が育成 スクリーンは現在を扱うための道具
スクリーンはあなたを説得するより、行動を引き起こすもの。
このあたりは紙の書籍と電子書籍では、一見似ているようで違う効果があるので、紙の書籍がなくなることはないのかもしれない。
5. 接続していく(アクセスしていく)
UberやAirB&Bのように持たない、所有しない。
何故なら所有より良いから。
ただ、以下の共有のところでも書くが、2020年に起きているコロナ騒ぎで、車などは所有するメリットが見直されるのかもしれない。
概念としては、リアルタイムで使えるレンタルに似ている。
過去30年は、より良いものをより少ない材料で作ることがもてはやされた。
それが、製品からサービスに変わり(所有権の購入→アクセス権の定額利用)、更にクラウド化している。
アクセスは所有にとって変わっていく。
そしてプラットフォームを持つ会社が強くなる(AppleのiTunes、Facebook、Googleなど)
6. 共有していく(シェアしていく)
所有という概念が時代遅れに。
ただ、先にも書いたように、感染症が流行したことによって、この動きは見直されるのかもしれない。
感染症が流行すると、車などはシェアしているより所有している方が安心だ。
シェアオフィスの流れを飛ばして、自宅オフィスの流れが進むかもしれない。
7. 選別していく
コンテンツが増えすぎてフィルターをかけないと見つからない。
フィルターとしては、
- 優先順位をつけていく
- 悪いものをブロックする
- キュレーターがお勧めを出すことで、フィルターとして働く(友人も一種のフィルター)
- 仲介者(出版社が選別する)
- ブランドがフィルターの役割を果たす
注意すべき点としては、フィルターがかかり、好きになるはずだが、見えなくなってしまうものもあるかも。(どんな良いものも切り捨てる可能性が有る)
フィルターを使うことでパーソナライズ化もされていく。
ノーベル賞受賞者・社会学者ハーバート・サイモン
「情報の潤沢さは、アテンションの貧困を生み出す(=人間の払う注意は唯一希少性がある、限界がある)」
→質の高いアテンションを大規模に増やしていくためのフィルタリングテクノロジーを利用すべき
→読んでもらう、見てもらうのに課金する世界がくるかも?(メールの相手によって開封したら課金、とか)広告とかは一部そのような形になりつつある??
テクノロジーに限らず、食料品や他の素材、サービスなど(コモディティとよばれる)のコストは産業革命以来ずっと下がり続けている。
2002年のIMFの白書によれば「コモディティの価格は過去140年にわたって毎年1%下がる傾向にある」
→1世紀半の間にモノの値段はほぼ無料になってしまう
→本当に価値があるモノは何か?「人間の経験、これはコピーできない」
→経験の価値は上がり続けている
→高級なエンターテイメントは毎年6.5%伸びている。(Liyan Chen “The Forbes 400 Shopping List:Living the 1% Life is More Expensive than ever” Forbes, 09.30, 2014)一般的なコンサートのチケット価格は1981年から2012年までの間に400%伸びた。
他にも、薬の価格は下がっても、在宅訪問など経験が絡むモノは高くなっている。経験にお金を払う。P252
8. リミックスしていく
従来の産業やコンテンツが自由にリミックスして新しい形に
巻き戻し、やり直しができることが普通に。
組み換える、再利用していくことがイノベーションの源泉。
価値を持つ創造は不可避的に何か別のモノへと変わっていく時代に。
9. 相互作用していく
VRの機能によって効果的に扱えるように
これから10年で相互作用できるものは増えていく
① より多く:今後作るモノにセンサーが加え続けられていく。音や視覚は勿論、GPS、温度の検知、X線ビジョン、嗅覚など
② より身近:スマートフォンや腕時計よりも身近に
③ 没入感が増す:VRのようにテクノロジー自体に飛び込む、ゲームの仲に入る(先日亡くなった子どもと再会するという技術が韓国であったがそれも一部…?)
→オンラインの他人が本当にリアルな人物なのかの判別は難しくなっていく
→将来のパスワードは自分の身体??
10. 追跡していく
2006年以降に生産された車には、ダッシュボードの裏に自己診断機能のチップがついていて、車がどう使われたかの記録を取っている。
それ以外に、ハイウェーの交通、相乗りタクシー(Uber)、超距離旅行、郵便物、水道光熱費、携帯電話の位置と通話記録、都市カメラ、商業施設と私的空間(公共機関の68%、私企業の59%、銀行の98%、公立学校の64%、個人宅の16%に監視カメラが設置)、スーパーの会員カード、テレビゲーム機、電子小売店(Amazon)、クレジットカード、電子銀行、写真の顔認識Webの活動(cookie)、SNS、検索サービスなど、全てトラッキングされている。
50年後にはあらゆるものがトラッキングされていることが当たり前に。
容易にコピーできない価値(パーソナライズ、実体化、本物であること)を追い求める人々は成功していく。
インターネットは世界で最大最速のトラッキングマシン。
トラッキングを飼い慣らし、市民のために生産的に使う方法を見つける人は成功する。
→自分が今やっていることで、トラッキングしていくシステムをつくれるものは何だろうか??
→トラッキングのデータを全てまとめ上げることができたら、どれだけの権力を握れるか、と考えると途方もない。
P341 この星で最も早く増殖しているのは、我々が生み出している情報の総量。
→年66%の割合でその総量が増えている。
→5年前:数百エクサバイトの情報(1人につき、アレクサンドリア図書館の80倍の情報)
→今:その320倍
個人として扱われたい(パーソナライズ化されたい)のであれば、情報を公開する必要がある。
プライバシーを保つ=通り一遍の扱いを受けることを容認する
現時点では政府や大企業(Google)と個人の関係は不公平(政府などは全員にアクセス可能だが逆は無理)だが、将来公平になると上手くいくこともあるかも??
→ブロックチェーン技術がそれを可能にしようとしている…?
匿名を基本にしたものはすべて失敗してきている(著者談)少しなら匿名性はよいが、量が増えるとシステムを壊す。
→責任の不在は最悪の事態を招く
プライバシーは信頼によってしか得られず、信頼を得るには一貫したアイデンティティーが必要。
→信頼と責任こそが物事を良くしていく。匿名性は完全になくしてはいけないが、可能な限りゼロにする。
11. 質問していく
ネットには不可能であり得ないような映像が毎分のように新しく投稿される。
例えば、素晴らしいプレゼンが見れる
→これまでより目が肥える
→刺激に鈍感になっていく(カフェインと同じ)
→自分のリズムをコントロールしないと、芯をもたないと、情報に振り回される
人間はインターネットに毎年2兆回の質問(検索)をし、その答えは無料(広告を貼ってそこから収益)
→過去には、すぐに答えてもらえることに価値があるとは誰も思いもしなかった
質問をするのが簡単であればあるほど、答えはより有用で、より多くの質問が生まれる。
回答マシンは無限に答えを増やす一方、われわれが質問するための時間は限られている。
答えは安くなる、質問は価値をもつ=超スマートな回答がどこにでもある世界では、完璧な質問こそ求められる
良い質問とは、正しい答えを求めるものではない
良い質問とは、すぐには答えが見つからない
良い質問とは、現在の答えに挑むものだ
良い質問とは、ひとたび聞くとすぐに答えが知りたくなるが、その質問を聞くまではそれについて考えてもみなかったようなものだ
良い質問とは、思考の新しい領域を創り出すものだ
良い質問とは、その答えの枠組み自体を変えてしまうものだ
良い質問とは、科学やテクノロジーやアートや政治やビジネスにおけるイノベーションの種になるものだ
良い質問とは、探針であり、「もし~だったら」というシナリオを調べるものだ
良い質問とは、ばかげたものでも答えが明白なものでもなく、知られていることと知られていないことの狭間にあるものだ
良い質問とは、予想もしない質問だ
良い質問とは、教養のある人の証だ
良い質問とは、さらに他の良い質問をたくさん生み出すものだ
良い質問とは、マシンが最後までできないかもしれないものだ
良い質問とは、人間だからこそできるものだ
12. 始まっていく
我々は上記のことが始まっていくプロセスのなかにいる
未来の人はこの始まりに立ち会いたかったと羨むだろう